トットちゃんは、放課後、学校を出ると、誰にも話しかけず、さよならもいわずに、口の中でブツブツ何かを言いながら、急ぎ足で自由が丘の駅まで来ました。
まるで落語のようだけど、トットちゃんは、いま、「トドロキケイコクハンゴウスイサン」という難しい言葉を、言い続けているのでした。
だって、もし誰かが隣に来て、「ジュゲムジュゲムゴコウのスリキレ」なんていったら、とたんに忘れちゃうに決まっているし、「よいしょ」なんて水たまりを飛び越えたら、もう、わかんなくなっちゃうから、とにかく口の中で、繰り返しているのが一番いいと考えたのでした。